こぎん刺しの森 制作|針の森(狩野綾子) 文・写真|稲垣早苗

Vol.2 ネコのマナグ(猫の目)とネコのアシ(猫の足)

暖かさを保ち、傷んだ布を繕うことから始まったというこぎん刺し。
けれど、そのモドコ(文様)の種類と表情の豊かさには驚かされます。
今となっては想像も及ばない寒さと暗さ(どんな灯りのもとで刺していたのでしょう)
の中で刺し綴られたはずなのに、モドコにはそんな辛さや苦しさは感じられません。
むしろ、どこかあたたかなおかしみを湛えているように感じられるのはなぜでしょうか。
刺し手はひたすら針を運びながら、心を無我の境地に泳がせて、ひととき布の上に夢の世界を広げていったのかもしれません。
その夢の世界には、北東北独特のユーモアがそっと沈んでいるみたいです。
そんなユーモアあふれるモドコの中でも、今回ご紹介する「ネコのマナグ」と「ネコのアシ」は、その代表とも言えるでしょう。
暗闇に光る猫の瞳。雪原に踊る猫の足跡。
津軽の女性たちは、その印象を糸で布に綴っていったのでしょうか。

ネコのマナグ

ネコのマナグ
ネコのマナグ(図解) イラスト|宇佐美智子

左右のマスに刺した横糸が、瞳を表しているネコのマナグ。
上下の文様はハナコの応用です。
一つの針目で表現する文様がある場合、刺し糸が布に埋もれてしまわないように気を配ります。
糸が布からはっきりと浮かび上がるように刺してみましょう。
ネコのマナグはどの色糸で刺しても愛らしいモドコですが、狩野綾子さんは黒系で刺すのが好みだと教えてくれました。
瞳の色を思わせてくれるからでしょう。

ネコのアシ

ネコのアシ
ネコのアシ(裏面)
ネコのアシの連続(図解)

まるでネコの肉球を思わせるネコのアシ。
糸がやさしくふっくらとなるように刺してみましょう。
足跡が続いていくような連続文様にするときは、
布と糸の色味のコントラストがはっきりしたものを選んだ方が、初心者の方には刺しやすいかと思います。

十日夜のポーチ

ネコのマナグとネコのアシを用いた十日夜(とおかんや)ポーチ
「こぎん刺しの魅力は、連続で一面に刺してこそ」
とは狩野綾子さんの制作への思いです。
その連続模様を指すために、モドコを方眼用紙に書いてみましょう。
そうすることで、全体のつながりが理解しやすいと思います。
最初は図案を見ながらでも、ひとつ模様が出来るころには、きっと見なくても刺せるようになりますよ。とのことですが、さて、どうでしょう。
個人差はあるかと思いますが、針を運ぶ人ならではの、無我の境地にもぐりこめるかもしれませんね。

バッグ

今回制作した夏色のバッグは、「ネコのアシ」と「石畳」というモドコを用いたもの。 下部に敷き詰められた石畳。その上を猫の足跡が闊歩しているイメージでしょうか。

さて、こぎん刺しのワンポイントアドバイスを狩野さんからいただきました。

  1. 刺し始めと刺し終わりの糸は結び玉を作らず、表に響かないよう2~3針の返し縫いを。
  2. 連続模様に仕上げるには、最初に刺す全体像を把握しましょう。
    その上で、上下左右の真ん中を定めて、そこからモドコを刺し始めます。
    このことで、針目を間違えにくく、上下左右を対称に刺すことが出来ると思います。
  3. 重要なのが、刺し始めの最初の一段。
    目数を間違えないように気をつけて始めてみましょう。
    一段目が正確に刺せたなら、後はうんと気持ちよく進みます。

さて、皆さんもネコのマナグとネコのアシを綴ってみませんか?
そして、ネコのマナグとネコのアシを用いた作品が出来上がりましたら、光の本編集部までご一報ください。
作品の画像などを光の本の中、更新帖でご紹介しています。
こちら(http://hinata-note.com/hikari/mail/postmail.html)で、まずメッセージをお寄せ下さい。

さあ、次回はテコナ(蝶々)とダンブリ(トンボ)を綴りましょう。

狩野綾子

青森県弘前市に生まれる。
結婚ののち、東京、千葉など関東に暮らす。
パッチワークを主に、針仕事に熱中する。
2000年より工芸ギャラリーに勤務し、同時に制作を「こぎん刺し」に集中する。
2006年より工房名を「針の森」として、作品発表を始める。
現在は秋田県に在住。