こぎん刺しの森 制作|針の森(狩野綾子) 文・写真|稲垣早苗

vol.1 序章と花コ

「こぎん刺し」を知っていますか。
近年、針仕事や手仕事を愛する人たちの間で、その魅力を新たに見直されている刺し子のひとつです。
「こぎん刺しの森」では、針の森という工房名で制作を続ける狩野綾子さんに、こぎん刺しの魅力を伝えていただきましょう。
狩野綾子さんは弘前に生まれ育ち、こぎん刺しを身近に感じながら、結婚後は東京での生活を長く過ごしました。
パッチワークを中心に、さまざまな針仕事を暮らしの中で楽しみながら、2000年からはこぎん刺しを制作の中心に据えました。
針の森のこぎん刺しは、まず基本をよく理解したものです。なので技法はこぎん刺しそのものですが、不思議なくらい新鮮な手仕事に映ります。
それはきっと、こぎんを刺すために何かを無理に作るのではなく、ひとりのセンスある女性が暮らしの中で作りたいものに、こぎんの美しさを添えていくからなのかもしれません。

では、こぎん刺しってどんなもの?ということから、お伝えしましょう。

-こぎん刺しの素材とはなんでしょう?

こぎん刺しのはじまりは、麻(苧麻)地に麻糸で刺したものでした。
これは、寒冷地の津軽地方では綿の栽培が難しく、「農家倹約分限令」によって農民は木綿着用が禁止されて、麻布を着ていたことに由来します。
けれど麻は繊維が荒く、冬の寒さを防ぐことが厳しかったために、布目を麻の糸で埋めていきました。
保温と補強の知恵が、こぎん刺しの始まりと言えるでしょう。

-こぎん刺しの文様の特徴はどんなものですか?

生地の横糸にそって、縦糸を奇数目に数えて刺すのを津軽こぎん刺しと呼んでいます。
ちなみに、偶数目を数えて刺すのは、南部菱刺しといいます。
拾い目の違いで、津軽こぎん刺しは縦長に、南部菱刺しは横長の文様になっていきます。
針の森では、津軽こぎん刺しの目数で刺しています。

-こぎん刺しのモチーフ、パターンはどんなものがありますか?

こぎん刺しの基礎模様はモドコと呼ばれて、20数種があると言われています。
けれど刺し方の変化や展開で無限にひろがってもいきます。
代表的なモドコには、花コ、豆コ、猫のマナグ、テコナ、フクベ・・・など津軽弁で身の回りの植物や動物の名がついているのも、微笑ましいものです。

-生地や糸はどうしたらよいですか?

針の森では、目が数えられるくらいの麻の生地を選んでいます。
糸は、こぎん糸を中心に、刺繍糸のつや消しであま縒り(縒りが緩いもの)の糸を使います。
ときには、麻糸や毛糸も使用します。
糸の太さは、生地の織り糸の太さより若干太めにすると、模様がふっくら浮き上がって仕上がるのでお薦めです。
針は、毛糸のとじ針やクロスステッチ針のように先のまるいものを使用します。

弘前の手芸屋さんでは、以下のお店で糸の発送をしてくれます。
「しまや」http://www.shimaya.info/index.htm 0172-32-6046
「つきや」0172-32-2727

布は、こぎん用とされているものよりも、目の拾いやすいものでお好みのものを選ばれてはいかがでしょうか。
針の森にとって、津軽こぎん刺しのすばらしさは心の拠り所ですが、伝統工芸の継承者という想いで刺し綴っているのではないので、心に適った生地や糸と出会ったときは、それらも取り入れています。

では、第一回目は、こぎん刺しの代表的なモドコ「花コ」です。

花コ イラスト|宇佐美智子
こぎん帖 花ツナギとナガレ

こぎん帖 花ツナギとナガレ
文様の間に斜めのライン「ナガレ」をいれるのが伝統的なこぎん刺しで、ナガレの種類も多くあります。
文様とナガレの組み合わせたものは、一面刺し綴ることになるので一番強度が出ます。
針の森では、バックの下の部分や持ち手部分などに刺すことが多く、保温効果も増すので、ティーコゼーにもお薦めです。

こぎん刺しは裏も美しいのが特徴のひとつです。

こぎん刺しは裏も美しいのが特徴のひとつです。

とおかんや(十日夜)と名付けたポーチ。

とおかんや(十日夜)と名付けたポーチ。
満ちゆく月のかたちに寄せて作った厚地のポーチです。
今回は春の野をイメージして、少し間をあけて花コを刺しました。
これからも、さまざまなモドコでとうかんやを作りたいと思います。

木をイメージして、ドアストッパーを作りました。

木をイメージして、ドアストッパーを作りました。
花コを配置して刺しています。
このようなインテリアのものにも、丈夫なこぎん刺しの特性を活かして制作します。

さて、みなさんも花コを綴ってみませんか?
そして、花コを用いた作品が出来上がりましたら、光の本編集部までご一報ください。
作品の画像などを光の本の中でご紹介していきたいと思います。
こちら(http://hinata-note.com/hikari/mail/postmail.html)で、まずメッセージをお寄せ下さい。
追って、画像をいただくようにご連絡させていただきます。

さあ、次回はネコのマナグ(猫の目)とネコのアシ(猫の足)を綴りましょう。

狩野綾子

青森県弘前市に生まれる。
結婚ののち、東京、千葉など関東に暮らす。
パッチワークを主に、針仕事に熱中する。
2000年より工芸ギャラリーに勤務し、同時に制作を「こぎん刺し」に集中する。
2006年より工房名を「針の森」として、作品発表を始める。
現在は秋田県に在住。